はじめに|“引き算”ではなく、“選び方”の問題
減量は、単に「食べる量を減らす」ことではない。
大切なのは、“何を減らして、何を残すか”という選択だ。
脂質を減らすのか、炭水化物を減らすのか。
どちらも正解になり得るし、どちらも不正解になり得る。
重要なのは、自分の体質やライフスタイル、トレーニングとの相性に合っているかどうかだ。
この記事では、トレーニーにとって代表的な2つの減量法、ローファット(低脂質)とケトジェニック(高脂質・超低糖質)を比較しながら、それぞれの特徴・メリット・デメリットを整理していく。
減量中の“迷い”が、“選択”に変わるように。
自分に合った食事法を見つけるヒントにしてほしい。
1. 減量における「食事法選び」の考え方
食事法には流行や好みもあるが、減量期において重視すべきなのは次の3つの軸だ。
- トータルカロリーのコントロール
- 筋肉を残すためのタンパク質摂取
- 続けられる仕組みかどうか
どんな食事法を選んでも、これらの土台が欠けていては、理想の結果は得られない。
そのうえで、「脂質を削るか」「炭水化物を削るか」は戦略の違いにすぎない。
次章からは、それぞれの方法を具体的に見ていこう。
2.ローファットとは?|“脂質を削って整える”王道の減量法

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特徴と概要
ローファットはその名の通り、「脂質」を制限する食事法。
1gあたり9kcalとカロリーが高い脂質を削ることで、摂取カロリーを無理なく減らせるのが特徴だ。
炭水化物やタンパク質はある程度残せるため、筋トレや日常生活のパフォーマンスを保ちやすい。
特に日本人の食習慣との相性が良く、多くのトレーニーがまず選ぶ“ベース型”の食事法とも言える。
PFCバランスの目安(ローファット)
- P(タンパク質):30〜35%
- F(脂質):10〜20%
- C(炭水化物):45〜55%
※体重やトレーニング強度に応じて、Pを高めに設計するのがポイント。
メリット
- 脂質は少量で高カロリーなため、削ると減量が進みやすい
- 炭水化物が摂れるのでトレーニングのパフォーマンスを維持しやすい
- 和食との相性が良く、自炊でも継続しやすい
- 体感的な“満腹感”が得やすく、食欲をコントロールしやすい
デメリット・注意点
- 脂質を減らしすぎると、ホルモンバランスに悪影響が出る可能性あり
- 調理法や食材選びに工夫が必要(揚げ物や外食が使いにくくなる)
- ローファットに寄りすぎると、肌や髪、メンタルに影響が出ることも
ポイント
脂質は“ゼロにするもの”ではない。
ホルモン生成や細胞膜、神経伝達などに必要な“生命維持の脂”でもある。
あくまで「削りすぎない低脂質」が、ローファット成功の鍵だ。
3. ケトジェニックとは?|“糖質を断って、脂質で回す”制限型の戦略

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特徴と概要
ケトジェニックダイエットは、「糖質(炭水化物)」を極限まで制限し、脂質をエネルギー源に切り替える食事法。
体内の糖質(グリコーゲン)を使い果たすことで、“ケトン体”を燃料とする代謝状態=ケトーシスに入るのが狙いだ。
この状態になると、脂肪が優先的に燃えやすくなり、体脂肪の減少が加速しやすい。
一方で、糖質を大きく制限するため、強度の高いトレーニングや日常生活のエネルギー感に注意が必要となる。
PFCバランスの目安(ケトジェニック)
- P(タンパク質):25〜30%
- F(脂質):60〜70%
- C(炭水化物):5〜10%(20〜50g/日が目安)
※糖質は徹底的に抑える必要があり、隠れ糖質にも要注意。
メリット
- インスリンの分泌が抑えられ、脂肪が燃えやすい代謝状態を維持できる
- 空腹感が抑えられやすく、食事回数が減っても継続しやすい
- 一部の人にとってはメンタルの集中力や安定感が向上することもある
- 糖質を抜いた分、むくみが取れて“見た目の変化”が早い
デメリット・注意点
- トレーニングのパフォーマンス低下(特に高強度・瞬発系)につながることがある
- 食材選びがシビアで、綿密な設計と継続が求められる
- 糖質を抜きすぎると、筋分解や体調不良(ケトフル)のリスクがある
- 外食や旅行との相性が悪く、続けにくさを感じやすい
ポイント
ケトは“短期間で絞る”のに強い反面、継続と設計のハードルが高い。
筋肉を守るための高タンパク設計と、ケトーシスを崩さない脂質の質の見極めが、成功のカギを握る。
4. どちらを選ぶ?|目的・体質・ライフスタイルで考える

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減量における「正解」は一つではない。
同じように見える体でも、体質や習慣、環境によって“合う食事法”は変わってくる。
以下の観点から、自分にとってのベストを見つけていこう。
トレーニングの強度と頻度
- 高強度・高頻度のトレーニングをしているなら、糖質が摂れるローファットのほうがパフォーマンスを維持しやすい
- ケトは瞬発系よりも有酸素や中強度系の活動と相性がいい
自分の体質やメンタル傾向
- 炭水化物で食欲が暴走しがちな人は、ケトで安定感を作るのも一手
- 一方で、糖質を制限するとメンタルが落ちやすい人は、ローファットの方が無理がない
継続しやすい食習慣かどうか
- ご飯中心の和食が好きならローファットの方がストレスは少ない
- ケトは調理や食材選びに工夫が必要で、“続ける工数”がやや多め
食費・コスト感
- ローファットは炭水化物や鶏胸肉など、コスパの良い食材で構成しやすい
- ケトは脂質とタンパク質に頼るため、どうしても食費が高くなりやすい
- 続ける期間が長くなるほど、金銭的な負担も“選ぶ基準”になってくる
まとめると…
観点 | ローファットが向いている人 | ケトジェニックが向いている人 |
---|---|---|
トレーニング | 高強度・筋トレメイン | 有酸素・体脂肪燃焼重視 |
メンタル傾向 | 糖質で安定するタイプ | 空腹感に敏感なタイプ |
習慣 | 和食中心、自炊派 | 肉・卵・脂好きな人 |
コスト | 続けやすい | 高めになりがち |
5. 栄養の補完と注意点|減量を支える“共通の土台”

Photo by Markus Spiske on Unsplash
ローファットでも、ケトジェニックでも。
減量を成功させるには「選んだ食事法を支える設計」が必要になる。
中でも見落とされがちなのが、“必要な栄養素の不足”と“体調の変化”。
共通して意識したいポイント
- タンパク質は体重×2〜2.5gを目安に摂取
→ 筋肉を維持しながら減量を進めるために必須 - ビタミン・ミネラルの補完
→ 減量期は食事量が減るため、不足しやすい。野菜・海藻・サプリで補う - 食物繊維と水分補給
→ 便通の乱れや代謝の低下を防ぐために意識したい要素
サプリメントの活用も選択肢に
- ローファット時:フィッシュオイル、マルチビタミン、カルニチンなど
- ケト時:マグネシウム、電解質(ナトリウム・カリウム)、MCTオイルなど
体脂肪を減らすことだけに目が行きがちだが、「代謝を落とさずに」「筋肉を守りながら」減量を進めるには、栄養の土台を整えることが不可欠だ。
補足:他にもある減量食事法
ローファットやケトジェニック以外にも、「断続的断食(IF)」「マクロ管理(IIFYM)」「カーボサイクル」などの食事法も存在する。
それぞれに理論や効果はあるが、どの方法も“続けられるか”が最も重要。
シンプルな方法から始めて、自分に合った形を見つけていこう。
6. まとめ|“減らす”のではなく、“整える”ための食事法を

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減量とは、「何を削るか」ではなく、「何を残すか」の選択だ。
筋肉を残し、代謝を守り、日々を整えながら続けられること。
それこそが、トレーニーにとっての“成功する減量”の条件だ。
ローファットは、コスパや継続性に優れた王道の選択肢。
ケトジェニックは、仕組みさえ整えば脂肪燃焼に強い戦略。
どちらも正解になり得るし、どちらも自分に合っているかが全てだ。
体質も、生活スタイルも、人それぞれ。
大切なのは、「減量=苦しみ」ではなく、「減量=整える時間」だと捉えること。
AGFは、そんな“納得できる選択”をするトレーニーを、これからも応援していく。