トレーニーに特有の体の不調とその原因・対策を、9つの視点から丁寧に解説。
筋トレをしているのに、なぜか体の調子が悪い。
肌は荒れ、便秘が続き、やる気が出ない。トレーニングの質も上がらず、疲れが取れない。
それらの不調は、筋トレをしているからこそ起こる“トレーニー特有のサイン”かもしれない。
本記事では、トレーニーが陥りがちな体の不調を9つのテーマに分けて紹介し、それぞれの原因と具体的な対策を解説していく。
筋肉だけでなく、体全体を整えていくための手がかりになれば幸いだ。
脂質不足が招く、肌荒れ・ホルモン不調

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原因|減量中の脂質カットがすべてを乾かす
減量期には、まず「脂質を削る」という判断をする人が多い。
確かに脂質は1gあたり9kcalと高エネルギーで、脂肪として蓄積されやすい。
だが、脂質は「ただの太る栄養」ではない。ホルモンの材料であり、肌のバリア機能や脳の働きにも不可欠な栄養素だ。
それを極端に削ると、身体の内側から調子を崩してしまう。
症状|肌の乾燥、荒れ、集中力の低下まで
脂質が不足するとまず出るのが、肌の不調。
乾燥、粉ふき、ニキビ、かゆみ……といった症状が出やすくなる。
また、脂質が作るホルモンのバランスが崩れることで、やる気の低下、睡眠の乱れ、メンタルの不安定さも起こりやすくなる。
見た目にも、パフォーマンスにもじわじわと悪影響が出てくるのがこのパターンだ。
対策|「悪い脂」ではなく「良い脂」を摂る
脂質は「削る」ものではなく「選ぶ」もの。
揚げ物や加工油脂を控えつつ、以下のような“良い脂”を適量摂取するのが大切だ。
- 青魚(サバ、イワシなど)→ EPA・DHA
- アボカド、ナッツ類 → 不飽和脂肪酸とビタミンE
- オリーブオイル・えごま油 → オメガ3・抗炎症作用
また、脂質とセットで摂りたいのが、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)。
脂質と一緒に摂ることで吸収率が上がり、肌の潤いや免疫力を高めてくれる。
高タンパク食が腸を乱す

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原因|たんぱく質だけでは腸は動かない
筋肉を育てるうえで欠かせない栄養素──たんぱく質。
プロテイン、鶏むね肉、ゆで卵、ギリシャヨーグルト……トレーニーの冷蔵庫に常備されるこれらは、まさに筋肥大の味方だ。
だが、たんぱく質ばかりで、腸を整える栄養素が不足していると、腸内環境が崩れてしまう。
たんぱく質を分解する際には腸に負担がかかる。腸内で悪玉菌が増えやすくなり、腸の動きが鈍くなって便秘を引き起こすこともある。
また、プロテインを牛乳で割って飲んでいる人は、乳糖不耐症の影響で下痢気味になることも。
症状|便秘、下痢、肌荒れ、張り感、不快感
腸の調子が乱れると、まず現れるのが排便トラブル。
便秘で苦しんだかと思えば、急に下す日もある。お腹が張って不快感が続いたり、肌荒れやニキビといった“外側の不調”にまでつながる。
腸と肌、腸と脳は密接につながっており、腸が荒れると心も荒れる。まさに“内側から崩れていく”典型例だ。
対策|腸にも筋トレ仲間を。食物繊維と発酵食品
腸内環境を整えるために意識したいのは、以下の3点。
- 食物繊維を摂る(不溶性+水溶性)
– 野菜、海藻、きのこ、玄米、オートミールなどを意識的に
– 特に水溶性食物繊維(わかめ・大麦・納豆など)は便をやわらかくし、腸内細菌のエサにもなる - 発酵食品を摂る
– 納豆、キムチ、ヨーグルト、味噌などを“毎日少量ずつ”続ける - プロテインの摂り方を見直す
– 水で割る、植物性に変える、乳糖カットタイプにする、などで腸への刺激を抑える
腸内環境の改善は、見た目ではすぐにわからない。だが、心身の調子・肌・免疫力に確実に影響する。
筋肉だけでなく、腸内細菌にも栄養を届けよう。
サプリの過剰摂取に注意

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原因|「効く」ものでも摂りすぎれば負担になる
筋肉を育てるため、体調を整えるため、さまざまなサプリメントを活用している人は多い。
BCAA、EAA、クレアチン、マルチビタミン、ZMA、プレワークアウト──。
どれも筋トレの味方であり、正しく使えば効果はある。
だが、「効きそうなもの」を無制限に摂ることが、身体に思わぬ負担をかけていることがある。
特に、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)や鉄分、亜鉛などは、体内に蓄積されやすく、過剰になると害になる栄養素だ。
また、サプリメントには添加物や人工甘味料が含まれていることも多く、腸や肝臓に負担をかけるケースもある。
症状|肌荒れ、胃腸の不快感、だるさ、尿の異常
サプリの過剰摂取によって現れる体のサインは、一見サプリとは関係なさそうなものが多い。
- マルチビタミンを飲み続けていたら、肌が荒れてきた
- プレワークアウトを使うようになって、胃がムカムカする
- EAAを頻繁に摂っていたら、だるさ・頭痛が増えた
- 尿の色がいつもより濃く、においも気になる
こうした変化がある場合、まずは「飲んでいるもの」を見直してみることが必要だ。
対策|“足し算”ではなく“引き算”の視点を持つ
サプリは、足りない栄養を補うもの。
だが、トレーニーの多くは「効かせるために足す」視点が強くなりすぎている。
ときには、引いてみることも大事だ。
- まずは自分に必要なサプリは何かを見極める
- 1日3つ以上摂っている場合は減らすことを検討
- 成分表示を見るクセをつけ、人工甘味料・添加物が少ない製品を選ぶ
そして何より、「なんとなく」飲み続けているものを一度やめてみる勇気。
サプリは薬ではなく、体を整えるための手段のひとつにすぎない。
体の声を聞くことが、最強のコンディショニングになる。
水分・電解質の不足がパフォーマンスを下げる

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原因|水だけでは足りない。汗と一緒に出ていくもの
高強度のトレーニングでたっぷり汗をかいたあとは、当然、水分補給が必要になる。
しかし、水だけをガブガブ飲んでいればOKと思っていると、落とし穴がある。
汗と一緒に体外に出ていくのは、水分だけでなく電解質(ナトリウム、カリウム、マグネシウムなど)。
これらが失われたままになると、体内のバランスが崩れ、筋肉や神経の働きに悪影響を与える。
水ばかり飲んで、電解質を補っていないと、かえって脱水状態に近づいてしまうことすらある。
症状|脚がつる、頭痛がする、トレが重い
水分・電解質が不足していると、以下のような症状が出やすくなる。
- 脚がつる(こむら返り)
- トレーニング中や後に頭痛が起きる
- 倦怠感や、なんとなくトレーニングが重く感じる
- 寝ている間に汗をかきすぎて脱水気味になる
一見すると「睡眠不足かな?」「疲れてるだけかも」と思われがちだが、これらは体内のミネラルバランスが崩れているサインであることが多い。
対策|水+塩=最強のリカバリードリンク
汗をかく習慣があるトレーニーにとって、「水を飲む」は最低限の対応。
本当に大事なのは、“失ったもの”を正しく補うことだ。
- トレーニング中や後には、ミネラル入りのドリンクを意識(塩をひとつまみ加えるだけでもOK)
- 特に夏場やサウナ後は、マグネシウム・カリウム補給も意識
- 食事面では、味噌汁・ぬか漬け・ナッツ類など、自然に電解質を含むものを選ぶ
水を飲んでも調子が悪いと感じたときは、「電解質が足りているか?」と自問してみてほしい。
それだけでパフォーマンスも、回復力も大きく変わる。
エネルギー不足が心も体も壊す

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原因|“足りてない”ことに気づかないまま走り続ける
減量中、カロリーを抑えるのは当然の戦略だ。
だが、やる気があるトレーニーほど「もっと削ろう」「もっと追い込もう」としがち。
その結果、体にとって必要最低限のエネルギーすら足りていない状態に陥ることがある。
これは単なる“ダイエットのしすぎ”ではない。
近年、スポーツ医学では「相対的エネルギー不足(RED-S)」という概念が注目されており、
摂取カロリーが消費カロリーを大きく下回ることで、身体機能そのものが落ちてしまう状態を指す。
症状|疲れやすい、無気力、集中できない、筋肉が減る
エネルギー不足は、筋肉の材料が足りないというより、生きるための燃料が足りない状態。
そのため、以下のような不調が起こる。
- トレーニングしているのに筋肉がつかない、むしろ減っている
- 朝からだるい、無気力、集中できない
- 情緒不安定、イライラ、ネガティブ思考
- 風邪をひきやすくなったり、回復がやたら遅い
これらの不調を「自分のメンタルが弱いから」と誤解して、さらに追い込んでしまう人も多い。
対策|最低限の“燃料”は削らない
減量はあくまでコントロールされたマイナスであるべきで、
体の機能やメンタルを壊すような削り方をしては本末転倒だ。
- 基礎代謝+日常活動分くらいは、最低でも摂取する
- トレ前・トレ後にはしっかり炭水化物を摂って、トレーニングの質と回復を支える
- 減量中でも、「この量なら続けられる」という摂取ラインを守る
減量の本質は「痩せること」ではなく、「筋肉を残したまま脂肪を落とすこと」。
そのために、削りすぎないことも、立派な戦略である。
オーバーワークが不調を呼ぶ

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原因|「休まない」努力は、努力ではない
頑張ることが美徳とされる世界で、トレーニーもまた例外ではない。
「筋肉は裏切らない」「努力は報われる」。その言葉を信じて、疲れていてもジムに向かう。
だが、それが慢性的な疲労や不調の原因になっていることに気づいていない人も多い。
トレーニングは筋肉にダメージを与える行為であり、それを回復させてこそ成長する。
その回復が間に合っていない状態でトレーニングを重ねれば、
パフォーマンスも筋肥大も頭打ちになり、ついには「壊れていく方向」へと進んでしまう。
症状|関節痛、イライラ、睡眠の質の低下、やる気の低下
オーバーワークのサインは、意外とわかりにくい。だが、次のような状態が続くなら要注意だ。
- 関節が痛む/慢性的な張りが取れない
- ジムに行くのが憂鬱、モチベーションが湧かない
- 夜中に目が覚める/寝ても疲れが取れない
- 些細なことでイライラする、落ち込みやすくなる
これらは身体だけでなく、自律神経やメンタルにも疲労が蓄積しているサインである。
対策|超回復の原則と、休む勇気
トレーニングは「やった分だけ成長する」ものではない。
やったあとに、回復してこそ成長する。この「超回復」の原則を忘れてはいけない。
- 筋肉痛が残っている部位は休ませる or 別部位のトレーニングに切り替える
- 週1日は「完全休養日」を設け、交感神経を落ち着かせる時間を作る
- 睡眠の質を高めるため、スマホ・カフェインの制限や寝る前のルーティンを見直す
休むことに罪悪感を感じる必要はない。
むしろ、休めない人ほど、成長が止まっていく。
「もうちょっといけるかも」のタイミングで休める人が、長く伸びていける人だ。
腸が不調だと、肌も脳も不調になる

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原因|腸が乱れる食生活を無自覚に続けている
トレーニーの食事は、筋肉のために設計されていることが多い。
高たんぱく・低脂質・低糖質を意識し、プロテインやサプリも欠かさない──。
しかしその一方で、腸にとっては負担になる組み合わせが続いていることがある。
たとえば:
- 動物性たんぱく質に偏る
- 食物繊維や発酵食品が少ない
- 人工甘味料や添加物の多いプロテインや加工食品を常用している
これらは腸内の悪玉菌を増やし、腸内フローラ(腸内細菌のバランス)を乱す原因になる。
腸は「第二の脳」と呼ばれるほど、心身に深く関わる臓器。
整っていなければ、肌にも脳にも悪影響が出るのは当然だ。
症状|便秘・下痢・肌荒れ・イライラ・疲れやすさ
腸内環境の乱れは、症状が全身に広がるのが特徴だ。
- 便秘や下痢が続く
- ニキビや肌のくすみ、荒れが改善しない
- イライラしやすく、気分が落ち込みやすい
- 風邪をひきやすく、回復も遅い
- 疲労感が抜けない/睡眠が浅い
これらが複合的に起きている場合は、「腸」が原因になっている可能性がある。
対策|腸にやさしい習慣を“毎日少しずつ”
腸を整えるには、特別なサプリや断食よりも、“日々の地味な積み重ね”が効く。
- 食物繊維(特に水溶性)をしっかり摂る
– わかめ、もち麦、オクラ、納豆、りんご、バナナ など
– 不溶性ばかり摂りすぎると逆に便秘になることもあるので注意 - 発酵食品を毎日摂る
– 味噌汁、キムチ、ヨーグルト、ぬか漬け、納豆 などを「習慣」に - 甘味料・添加物をなるべく減らす
– 特に「0カロリー」や「プロテインバー」に含まれる人工甘味料に注意
腸はすぐに変わる場所ではない。だが、腸が整うと、全身の調子が連鎖的に良くなる。
見えないけれど、実は最も鍛えるべき“内臓の筋トレ”かもしれない。
ストレスと交感神経優位の悪循環

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原因|“緊張モード”が続きすぎている
トレーニングは、交感神経を活性化させる。つまり「戦闘モード」に入る行為だ。
それ自体は悪くない。問題は、そのモードから切り替えるタイミングがないこと。
日中は仕事や人間関係でピリピリし、夜になってもスマホを眺め、眠る前まで頭が回り続けている。
休まる暇がない毎日のなか、交感神経はフル稼働し、副交感神経(リラックス・回復モード)にうまくスイッチできない。
交感神経優位の状態が続くと、筋肉の回復、内臓の働き、免疫系までもが低下してしまう。
症状|寝つけない・食欲がない・やる気が湧かない
ストレスが抜けない状態では、以下のような“なんとなく調子が悪い”症状が出やすい。
- 寝つきが悪い/途中で目が覚める
- 朝食が入らない/胃腸が重い
- やる気が出ない/疲れやすい/頭がぼーっとする
- 筋肉の張りが取れない/ケガが増えた気がする
どれも「トレーニングのせい」ではなく、回復のスイッチが入っていないせいかもしれない。
対策|“切り替える時間”を意識的に作る
副交感神経を優位にするには、「心地よいと感じる時間」を毎日の中に入れることが重要だ。
- スマホを寝る1時間前に手放す
- 湯船にしっかり浸かる
- 寝る前にアロマや間接照明でリラックス空間を作る
- 朝イチで深呼吸、ストレッチ、軽い散歩
- ノートに思考を吐き出す(ジャーナリング)もおすすめ
これらは一見、筋トレとは関係ないように思える。
だが、鍛えた体を「回復」させるための最高のスイッチでもある。
「頑張る時間」だけでなく、「ゆるめる時間」もトレーニーには必要だ。
急激な体型変化による皮膚の不調

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原因|体は変わる。でも皮膚には時間がかかる
トレーニングや食事管理がハマり、体型がどんどん変わっていく。
これはまさにトレーニーにとっての「成果」だ。
しかしその一方で、皮膚がその変化についてこられないことがある。
急激な増量で皮膚が引き伸ばされると、ストレッチマーク(肉割れ)ができやすくなる。
また、急な減量では、皮下脂肪と一緒に皮膚のハリも失われ、たるみやシワっぽさが気になることも。
さらに、ホルモンバランスや皮脂分泌の乱れで、ニキビや肌荒れが出るケースも多い。
症状|肉割れ、たるみ、肌荒れ、乾燥、赤み
- 腕・肩・腹部・脚に赤紫〜白っぽい筋が現れる(ストレッチマーク)
- 皮膚がたるんで、引き締まらない
- ニキビや炎症、毛穴の目立ちが気になる
- 乾燥・赤みなど、肌が敏感になる
これらは筋肉や脂肪の変化の「副作用」として現れるもので、見た目に関する悩みとして地味に効いてくる。
対策|皮膚にも“成長の時間”と栄養を与える
皮膚の健康は、筋肉とは違うスピードで回復・変化する。
無理に短期間で体型を変えるのではなく、「皮膚の伸縮性」も意識したケアが大切だ。
- 急激な増減量を避け、月単位での緩やかな変化を目指す
- 保湿ケア(オイル・クリーム)を風呂上がりに継続
- ビタミンC・E・コラーゲン・亜鉛などの摂取を意識
- 肌荒れが続く場合は、糖質・脂質のバランスや腸内環境を再チェック
肌もまた、トレーニングの成果のひとつ。
“鍛える”だけでなく、“守る・整える”という視点も、これからのトレーニーに必要だ。
まとめ
筋トレにハマるほど、トレーニーは「数字」と「見た目」に敏感になる。
扱う重量、体脂肪率、腹筋の割れ具合──。
だがその裏で、便秘・肌荒れ・無気力・関節痛といった“不調”が静かに進行していることもある。
その不調は、意志の弱さではない。
多くの場合、必要な栄養が足りていなかったり、回復のスイッチが入っていなかったりするだけだ。
体を鍛えるなら、内側から。
腸、肌、ホルモン、神経、免疫──。すべてが整ってはじめて、筋肉は最大限のパフォーマンスを発揮できる。
トレーニーの不調には、トレーニーなりの対策がある。
必要なのは、「気合い」ではなく「理解」だ。