──気にするべきか、気にしなくていいのか?
不安になる噂──筋トレするとハゲる?
「筋トレしすぎると、ハゲるらしい」
SNSやジム仲間の雑談、ネットの記事や動画で、そんな言葉を目にしたことがある人も多いかもしれない。
たしかに、トレーニーには短髪や薄毛の人が多く見える場面もある。 それを見て「やっぱり筋トレって髪に悪いのでは?」と感じてしまうのも無理はない。
だが、その前提には誤解がある。 筋トレが髪に与える影響を語るには、まずAGA(男性型脱毛症)の仕組みと、筋トレによって体内で起きる変化を正しく理解する必要がある。
筋トレは直接的な原因ではない
まず結論から言えば、筋トレが直接的に薄毛を引き起こすわけではない。
話題にあがるのは「筋トレ→テストステロン増加→DHT増加→AGA進行」という流れだ。
たしかにDHT(ジヒドロテストステロン)はAGAの主な原因物質であり、 毛根に作用することでヘアサイクルを乱すことが知られている。
だが重要なのは、 テストステロンが増える=DHTが増える、ではないという点。
DHTの量やその影響力(感受性)は、ほとんどが遺伝的要素に左右される。 つまり、筋トレをするかどうか以前に「薄毛になりやすい体質かどうか」が土台として大きいのだ。
さらに言えば、筋トレで一時的にテストステロンが増加しても、 それがすぐにDHTへと変換され、脱毛を引き起こすわけではない。
体内にはホルモンバランスを保つ調整機構があり、 筋トレによって急激に髪が抜けるようなことは考えにくい。
ネットで語られる「筋トレ=薄毛」説は、 印象に基づくものであり、科学的には根拠が薄い。
むしろ筋トレは、薄毛対策の土台を整える
一方で、筋トレは間接的に髪に良い環境をつくる習慣でもある。
睡眠の質が上がる

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筋トレを継続することで、入眠しやすくなり、深い眠りを得られるようになる。 睡眠中には成長ホルモンが分泌され、それが髪の成長にも寄与する。
ストレスが軽減する
ストレスは交感神経を刺激し、頭皮の血流を悪化させる。 筋トレはエンドルフィン(幸福ホルモン)を分泌し、 ストレスの軽減に効果的だ。
血行が促進される
トレーニングによって全身の血流が良くなる。 その結果、頭皮にも酸素や栄養が届きやすくなる。
健康的な食事への意識が高まる
筋トレを日常化している人ほど、 高タンパク・ビタミン・ミネラルなどを意識した食事に切り替える傾向がある。 それらの栄養素は、髪にとっても有益なものだ。
筋トレは、髪そのものを直接育てるわけではないが、土台を整える習慣にはなる。
髪を守る3つの軸
薄毛と向き合うには、「自分で整えられる部分」に目を向けることが基本だ。
生活習慣の見直し
- 食事:タンパク質・亜鉛・ビタミンB群・鉄などを意識
- 睡眠:6〜7時間以上を安定して確保
- ストレスケア:軽い有酸素運動、趣味、入浴など
頭皮ケアの習慣化
- 洗浄力のやさしいシャンプー(アミノ酸系など)
- 指の腹で優しく洗う、しっかり乾かす
医療の力を活用する
- フィナステリドやミノキシジルなど、AGA治療薬を検討
- 抜け毛が気になった時点で、専門の医療機関に相談
遺伝はコントロールできない。 でも、生活と行動は、自分で整えられる。
強さとは、髪ではなく、どう向き合うかに宿る

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筋トレを続ける中で、体つきに自信が持てるようになる一方、 もし薄毛という変化が現れたら、不安や葛藤を覚えることもあるかもしれない。
だが、そこでどう振る舞うか。 そこに強さが問われる。
髪があるかどうかで、自分の価値は決まらない。
むしろ、薄毛と向き合いながらも、自分らしく立っていられる。 その姿勢こそが、芯のある強さだ。
筋トレを続けることで得られるのは、筋肉だけじゃない。
悩みにも向き合える、ぶれない軸だ。
髪のことで悩む時間も、心と生活を整えるきっかけに変えていける。 それはもう、強さと呼ぶにふさわしい前進だ。